ハチミツが入った木製のボウルの写真

非加熱ハチミツ。よく聞く言葉ですよね?では、あなたは非加熱ハチミツの基準をご存じでしょうか。

この記事は、非加熱ハチミツの事を知らないあなたはもちろん。「基準?そんなの知っていますよ」と言う方にも読んでいただきたいと思っております。

この非加熱ハチミツという言葉は、意外にやっかいですので・・・。

非加熱のハチミツの基準とは?

メジャーをアップにした画像

非加熱と言われるハチミツの基準って何なのでしょうか。

非加熱ハチミツを求めるお客様の声

太田養蜂場は催事など自社以外での販売も行っております。その中で必ず何度か聞かれるのが、「このハチミツは非加熱ですか?」という言葉です。

どのようなハチミツを求めているのか、お話を聴いてみると『まったく温度をかけていないハチミツ』という事が分かりました。

確かに、前に調べた時に同じような基準を他の養蜂家や個人の方のブログ記事などを読んだことがあります。

では、いったん上記を基準として、実際に一般的な養蜂場で販売可能かを検証していきたいと思います。

非加熱ハチミツを一般的な養蜂場は販売できるのか?

ハチミツを選んでいる女性の写真

答えはYESです。ただ、いろいろなデメリットが出てきます。

デメリット1:非加熱のはちみつは異物混入率が高くなってしまう

僕たちのような養蜂場は、はちみつを商品化する時に2~3回ろ過します。

なぜ、ろ過するかというと巣のかけらやミツバチの体の一部が、蜜を搾る遠心分離機の影響によって細かくなってしまい、はちみつに混入してしまう可能性があるからです。

ろ過しやすくするために、はちみつを45℃程度に温める必要があります。

非加熱と言われるハチミツは、性質上ハチミツを採った後にすぐ瓶詰する必要がありますので、ろ過が少なくなり異物混入の確率が高くなってしまうのです。

デメリット2:非加熱ハチミツは結晶しても、そのまま販売

はちみつの成分は果糖とブドウ糖です。この二つはいわゆる糖分ですので、砂糖などと同じように結晶化してしまいます。

もちろん、はちみつの種類によって結晶化までの時間は変わりますが、最終的には結晶化してしまいます。

そして、結晶化は多くのお客様に嫌がられる現象です。僕たちは結晶化していないはちみつを販売するために、はちみつが出来るだけ45℃以上にならないように温めます。

温めてから商品化するので、結晶していないはちみつが店頭に並んでいます

非加熱ハチミツとして販売すると、温度を一切加える事が出来ないので結晶化したハチミツをそのまま販売することになります。

デメリット3:非加熱はちみつは高価格になる傾向がある

非加熱はちみつを販売する手段として、保温庫を導入するという手段があります。

この方法はたいへん素晴らしいのですが、維持費が掛かってしまいますのではちみつの価格にも大きな影響が考えられます。

また、非加熱はちみつを求めている方々は『健康には投資を惜しまない』というお客様が多いように見受けられ、そのような方に販売する商品ははちみつに限らず高価格になる傾向があります。

非加熱はちみつを養蜂場が販売するとしたら、この様なデメリットが考えられます。ただ、上記3つのデメリットは対した事ありませんが、コチラは非加熱はちみつを求める方には衝撃かもしれません。

非加熱はちみつの正式な基準は養蜂業界には存在しないから・・・。

曖昧な表情を浮かべる男性の写真

実は、非加熱ハチミツの正式な基準って養蜂業界にありません。正式な基準がないという事は自分たちで非加熱はちみつの基準を作るが出来るという事なのです。

非加熱の前に加熱ハチミツってあるのか

炎の写真

加熱という言葉を聴いたら何度くらいの温度をイメージしますか?あまり低い温度はイメージしないのではないでしょうか。

個人的に思う加熱は、人間がやけどしてしまう様な80℃以上をイメージしてしまいます。

■加熱はちみつに関して養蜂家としての見解

加熱はちみつと聞いて、多くの養蜂家がイメージするのは100℃近い温度を加えているハチミツです。

はちみつの原材料となる花の蜜は、もともと糖度が20~30%の砂糖水のようなものと言えます。この糖度が低い蜜をミツバチは巣に貯めて、羽で仰ぎ水分を飛ばして糖度を80%前後まで高めるのです。

ただ、一部の海外産はちみつは糖度が上がる前のハチミツを生産してから、高温で煮詰めて糖度を人工的に上げています。

この様なはちみつを加熱はちみつと考えます。

非加熱ハチミツの基準とは何なんだろう?

疑問を感じている男性の写真

上記の加熱はちみつの基準をもとに考えると、一般的な養蜂家が販売している45℃前後の温度で温めているはちみつは非加熱はちみつとも言えます。

また、養蜂業界には『非加熱はちみつ』の定義がないため、養蜂家自身が温度を加えているはちみつを「うちの商品は一部の海外産みたいに高温で加熱しないから非加熱はちみつだ!」といって非加熱はちみつで販売することもできます。

ちょっと、乱暴に思えるかもしれませんが養蜂業界で正式な基準がない以上、このような販売のしかたも可能なのです。

非加熱はちみつや同じような意味合いで使われる生はちみつも、最初は『他の商品との差別化』するために作られた言葉です。つまり、マーケティングとして作られた言葉です。

なので、正式な基準はないのです。

ただ、どうしても非加熱はちみつを食べたいという方にむけて養蜂家が考える基準をお話していきたいと思います。

養蜂家が考える非加熱はちみつの基準とは

3つの選択肢の前に立つ男性

非加熱はちみつは、一般的な基準として加熱をしていないというものがあると思います。また、他にも所説ありますが43℃以下で温めているものも含まれるようです。43℃とは、はちみつの酵素が死なないギリギリの温度とのこと(らしいです)。

もし、非加熱や生と言われるはちみつを食べたい場合は、はちみつを湯せんするときの温度を確認すると良いです。

ただ、養蜂家の立場からすると50℃までの温度で湯せんしたとしても、大きく栄養価が損なわれることはないと考えています。実際に養蜂研究で有名な玉川大学の中村教授も、50℃で温めてもはちみつの栄養価などはそれほど損なわれることは無いと言っています。

また、43℃ではちみつの酵素が死ぬと言われていますが、45℃程度で温めている弊社のはちみつでは酵素の証である、白い泡が保管しているはちみつに出てきます。つまり、酵素は死んではいない。もしくは、大部分は生き残っていると言えるのではないでしょうか。

45℃でも、酵素は残っているのです。

ですので、この記事では非加熱はちみつや生はちみつは、45℃以下の温度で温めているはちみつと定義したいと思います。

■最後に

今回はこのような記事を書いたのは、温度を加えているはちみつを嫌がるお客様が増えてきている事に、養蜂家として若干のさみしさを覚えたためです。

はちみつは健康に良いものですが、花によって味わいや風味の違いを楽しむことができる食品です。養蜂家としては、どんなはちみつも試していただき自分にあった、味や風味のはちみつを探す楽しさを味わってもらえたら嬉しいなって思っています。